サワーチェリーパイ
「皆、ありがとう。本当に最後まで」


改めて頭を下げて出て行こうとする陽生に対し、マスターが声を掛けた。


「最後にこれでも食って行け」


カウンター越しに、サワーチェリーパイを1ホール丸ごと差し出す。


「マスター、ありがとうございます」
「ほら、アタシ達からはこれだよ」


入れたばかりのコーヒーを、1ポット丸々ボックス席に置くマサヨ。


「さ、座って。今日はここでお別れ会よ」


磨朝に手を取られて、ボックス席の中央に座らされた陽生は、両手で顔をおおって泣き出した。


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