サワーチェリーパイ
「どんなに頑張っても、母さんのレベルには届かないんだ」


と、いつもあたしにだけグチをこぼす。


そんな樹が、小学生の頃から愛しくてならなかった。


彼の事を理解出来るのはあたしだけ、と思い込む様になってしまう程に。


好きだという感情を持ち始めたけれど、でも、ずっと告白なんて出来ない。


幼なじみだから……。


お母さんがコーチとの打ち合わせを始め、いつもの様に2人で一緒にリンクを出る。


樹は、すぐに伸びをして今日の疲れを取ると、あたしにいつもの質問をした。


「陽生、今日も持って来た? 」
「うん」


答えると、最高の笑顔になってくれる。
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