サワーチェリーパイ
「じゃあ、そうしよう。本人の希望だし」
「oh……」
「ごめん、気持ちは凄くうれしかった。皆の事、絶対に忘れないから」


その言葉で晴斗は初めて陽生を見た時、胸の中に刺さった矢が、もっと深い傷を作るのを感じ、深い溜め息をもらす。


駿府は静かに彼の肩を叩き、目でうなづく。


「何だよ、同情してんのか? 」
「いや、考えてる事が分かるから」
「マジメっ子に心配されるほど、おちぶれちゃいねえ! 」
「強がらなくてもいいよ、君が誰よりもナイーブだって知ってるんだ。僕達は」


小声でそう伝えると、駿府はメガネを外して目をこする。


「らしくねえぞ、お前ら。陽生ちゃんと最後の夜なんだから、パーっとやろう」


虹太の言葉で空気が変わり、皆、一斉にサワーチェリーパイをつつき始めた。
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