サワーチェリーパイ
「拾え! 早く」
「ラジャー! 」


腕力自慢のアーリオが荷台から飛び降りて、晴斗の体を拾い上げると軽トラは逃走を始める。


「派手にやったね。頭から血が出てる」
「大丈夫だよ、意識は無いけど頭は血が出やすいから」


駿府が医者の息子らしく冷静に診断をし、応急手当をしている間に陽生を乗せた飛行機は新千歳空港を目指して飛び立って行った。


「see you! ハルキー! 」
「またなー! 」


マーティンと虹太が空に向けて手を振る。


「von voyage」
「何でフランス語なんだい、アーリオ」


早瀬はアーリオに突っ込む。


「ったく、散々カキ回して行きやがって」
「まあ、落ちも付いたって事でお後がよろしいようで」


運転席で禁煙パイプをくわえた三次が雲1つ無い青空を見ながらボヤくと、駿府がシメる。


こうして、晴斗の青春は本人の意識が無いまま遠い空へと飛び去って行った。
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