サワーチェリーパイ
「藤川先生、もうすぐですからね」
「受賞が決まったら、パーっとやりましょう」


編集部員達の声で、自分が今、選考会にかけられていると思い出した陽生は皆に向けて微笑む。


「サワーチェリーパイでも食べませんか? ここの名物なんです」
「先生のおすすめでしたら」


皆であのサワーチェリーパイを食べている所に、駆け込んで来る1人の青年。


「すみません! 今、社から連絡が入りました! 藤川先生の受賞が決まりましたよ」


彼の声を聞き、全員が総立ちになる。


「おめでとうございます! 先生」
「作田川賞を取れたらベストセラー作家の仲間入りですよ! 」


店内から拍手がまき起こり、陽生は照れて下を向いた。


「おい、新人! 早く次の店の予約しとけ! 」
「はい! 」


その返事の声で、陽生は駆け出した彼の後姿に息を飲む。
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