サワーチェリーパイ
あの日来ていたオヤジ達は東京の私立高校の校長。


そう、樹をスポーツ特待生として入学させるために見学に来ていたのだ。


中学3年になり、樹の進路が地元の高校では無いと知り、あたしは大きなショックを受ける。


「樹、東京の学校に行くってホント? 」
「うん、これから大会もどんどん始まるし、それにあの高校に行けば、コーチも付けてくれて、学費も免除されて、大きな大会にもガンガン出られるからね」


進学が決まり嬉しそうな樹、でも、離れ離れになると知ったあたしは、目の前で喜んではみせたけれど、家に帰ると泣き続けた。


どうして遠くに行くの? あたしはどうなるの?


こんなに樹の事が好きなのに、何で、何で離れるの。


と……。


それでも学校で樹に会うと、普通の顔をしていなくちゃいけない。


気持ちに気づかれたくないから。

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