サワーチェリーパイ

彼の行く通学路を、明らかに改造してあるバイクが何台も通る。


「遅いぞ晴斗！　」
「オラオラぁ！　早くしろよぉ！　」


自転車をヤケに大また開きでこいでいる生徒にも追い抜かれたが、晴斗は動じない。


たとえ背後から、某有名マフィア映画の音階でクラクションを鳴らされても。


「晴斗ぉ、おーっす」


クラクションを鳴らしたのは、三次の運転する軽トラだった。


無免許で堂々と運転しているなんて、並みの高校生にはまずマネ出来ないが、いざという時にはとなりに座る職人にハンドルをゆずればいいと思っているらしい。


「おー、三次」
「オメー、早く歩けよ」
「ギリだけど間に合うだろ」


無駄話をしながら、通学路を軽トラと並んで進む。