サワーチェリーパイ

しかし頭の中で「恋愛に頭なんて関係ねえ！」と割り切り、彼にしては珍しくやる気を見せた。


その瞬間、


「ハルト！　attack！　」


小声でマーティンが言うと、テーブルの下で晴斗のフトモモをつねる。


「お……おう、あのー、藤川さん」
「はい？　」
「あの、俺とメルアド交換してくれませんか？　」


表情をそっとうかがうと、何とも言えない複雑な顔をしていた。


ろくに話した事も無い男子学生、おまけに超不良で知られる西工業の生徒にそんな事を言われたら、誰でもそんな表情になるだろう。


「かまわないけど、理由は？　」
「ah－、ハルトネ、キミガ」


言いかけたアーリオの足を、思いっきり踏み付ける。


「auch！　」
「俺、あのメルトモ欲しくて。こいつら、誰もメールくんなくて」


嘘を必死で並べ、その場をとりつくろう。