サワーチェリーパイ
「oh! マタフラレタノ! 」


ボックス席に居た一目で分かるハーフの男子学生がオーバーに両手を広げ、優しく彼を包み込む。


「ハルト、ダイジョーブstarのカズホドオンナノコイルヨ」
「うるせぇっての、マーティン」


その優しい手をうざったいとばかりに振り解き、ドスンと音を立ててシートに座る。


「ちょっと、迷惑なんだけど」
「静かに座ってくれないかな」


テーブルの上へ広げた問題集が、晴斗の動きで閉じてしまったと迷惑そうに顔を上げるメガネを掛けた黒色ブレザー姿の真面目そうな学生2人組。


しかし、彼の涙に気づき、少しだけ心配そうな表情をした。


毎度の事だけれど、涙を流すのはこれが初めてで、さすがに勉強一筋と見える彼らも気持ちが動いたのであろう。
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