サワーチェリーパイ
「モテモテじゃねーの! ん? 」


教室に到着すると、通学路での様子を窓からのぞき見ていた虹太が今日もまたエロ本を手に話しかけて来る。


「あー、俺もうダメだわ」
「次に行けよ、あの子もケッコーイケてたし」
「俺は、陽生ちゃん一筋なの」


そう言った晴斗の頭を、スコーンとスポーツ新聞で叩く三次。


「その口で言うな、お前の携帯、女の子のメールアドレスで一杯だろうに」
「だけどー♪ 二度とメールが来ないメルアドばっかー♪ だって晴斗はモテーないー男♪ 」


茶化す虹太に嫌そうな顔すらせず、御花台の校舎を窓から見る。


「何で返信してくんねえのかな? 」


髪をかきむしるが、彼には答えを出せない。


そう、出せるほどの恋愛経験が無いからだ。


「俺は普通に来るね、ってか返信で大変」
「まあ、俺もだな」


三次と虹太は、いつも携帯のメールが一杯届く。


だが、晴斗は届かない。

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