サワーチェリーパイ
待つこと1時間、その間、晴斗が妄想コースターに乗車してしまう。


『暗いだろ、コレ。で、手にぎって、陽生が怖がる。俺、そこでガッツ見せて、最後はブチューっ! やべ、これしかねえ! 最強! 』


いい加減にして欲しいものだが、これが彼なのだから仕方ない。


様子に気付いた陽生は、現実に引き戻すために彼の腕を引く。


「何考えてんだよ? 晴斗」
「え、あ、怖いなって」
「しっかりしろ」


バンっと背中を叩かれ、現実に引き戻されると、後ろの3人組は不気味な顔をしてヒソヒソ話を始めていた。


「ナニ、あのコ。ブツブツ言って…」
「ヤバ、こっち見てる」
「目、合わせない合わせない」


シートに座り、晴斗の妄想を乗せたジェットコースターが発進する。


が、晴斗は重大な事実を1つ忘れていた。
< 81 / 293 >

この作品をシェア

pagetop