聖なる夜に夢を見せて
 いつの間にか眠っていた私は、あまりの幸せな夢に涙が零れてくる。
 シンデレラは十二時を過ぎると夢から覚める。それはわかってたのはずなのに……せつなさが残る。

「本当に泣き虫だな……俺のシンデレラは」

 背後からそんな声が聞こえると、いつの間にか腕の中に囚われていた。
 夢の中と同じ、極上のささやきに揺り起こされると、ベッドの周りにはキャンドルが綺麗に揺らめいていた。

「夢じゃなかったの……?」
「俺が夢で満足できないだろう」

 その言葉と共に私はくるりと寝返りを打つ。すると、誠一さんは私のおでこにそっとキスをする。

「私で……いいんですか?」
「お前の他に、愛おしいと思えるものはないからな」
「……玲ちゃんみたいになりたかったです」
「却下……。なんでそこであいつが出てくるんだよ。馬鹿娘」

 おでこを突かれ痛みを感じる。それさえもこんなに幸せに思えるなんて知らなかった。

「こんなに愛してやってるのに……お前は本当に」
「えっ……?」
「俺が優しく出来るのも、素顔を晒してるのも自分だけだって気づけよ」
「でも……」
「どんな気持ちでずっとお前に惚れてたか、思い知らせてやるよ」

 もしかして、誠一さんも私を……。そんな甘いうぬぼれが心をざわつかせる。
 優しい優しい甘い時間が嘘じゃない。そう呟くように、ガラス越しの空から真っ白な雪が舞い降りてくる。

「そんなことより、二人だけの初めてのクリスマスを過ごそうぜ」
「誠一さん……」
「この先のクリスマスも、悠奈をこうやって愛してやる……」

 お互いの唇が重なりあうと、二人きりの終わらないクリスマスが始まる……。
 けれど、もう消えたりしないと彼の全部が私を包んでくれた。
 ――イブにかけられた優しい恋の魔法は永遠に私を包んでくれる。
 誠一さんの腕の中で、覚めない夢を見ながら、薬指の指輪にそっとキスをした。
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