抹茶飴。
僕は何もかも勝って見えた彼女が憎かった。

「君に関係ないだろ?僕の辛さも知らないくせに」

一秒でも長く彼女の姿を見たくなくて、痛みにこらえ首を横に向ける。

「そんなにいらない命ならさっ。私にちょうだいよ」

彼女の言葉に僕は驚いたことを今でもよく覚えている。

これが僕と彼女との出会いだった。

彼女は重い心臓病で、この病院に入院してもう三年がたっていた。

彼女の肌が白く見えたのは、栄養が足りずに青白くなっただけ。

目が大きく見えたのも食事をまともに食べられないせいで、痩せこけてしまったから。

黒い髪がはえるのは、彼女の肌がとても白く見えるから。

そこまで弱っていても彼女の心は強かった。

「今日も病院を抜け出そうとしたんだって?」

僕が笑っても彼女は笑わない。

「こんなとこはうんざりなの!早く退院してコーヒーだってブラックで飲めるようなかっこいい大人になるんだから!」

それは彼女の口癖だった。

「コーヒー飲めたからって大人じゃないよ?」

「うるさいわね!私の基準だからいいのよ!」

彼女は頬を膨らませ怒る。

いつしか僕は彼女に強く惹かれるようになっていた。

< 14 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop