抹茶飴。
枯葉に恋
俺は先輩に恋をしていた。

だけど先輩は俺のことなんて気にも止めていなかった。

それでも俺は先輩が好きだった。

「ひーなたせんぱいっ。お昼一緒に食べましょ?」

食堂で一人ぽつんと座っている先輩の向かい側の椅子を引く。

別に彼女はいじめられているわけでも、嫌われているわけでもない。

彼女自身が一人が好きなのだ。

「ダメって言ってもそこに居座るんでしょ?」

「よくおわかりで。」

フンッと鼻で笑うと彼女は窓の外を見つめる。

いつも食堂の一番奥の窓際に座る彼女。

そこは日向先輩の特等席だった。

いつもそこで本を読んだり、勉強をしたり、音楽を聴いていたりする。

手元には必ず食堂のものではなく、自分が持ち込んだ弁当がおかれている。

周りの人は先輩に近寄りがたいというが俺はそうは思わない。

俺が彼女に興味を持ったのは結構前だった。

最初は俺も取っ付きにくい奴だと思ってた。

けど、昔、窓枠に乗ったスズメに自分のサンドイッチを食べさせようとしている先輩を見て少し印象が変わった。

小さなパンの切れ端を窓枠にゆっくり指で押す。

真顔で慎重にパンクズを突いている彼女がおもしろかった。

スズメは先輩の指が目前にまでくると、パンクズに見向きもせず飛んでいってしまった。

それがショックだったのか、大げさなほどに先輩はうなだれた。

それがおもしろくてそれ以来ずっと先輩を見てきた。


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