抹茶飴。
この飴をもらったのはそんなに前のことじゃない。

冬休みの少し前のテスト返却の日だった。

私は山元に本を貸す約束をしていた。

山元のクラスの前までくると、彼は入り口の近くで私を待っていた。

「はいこれ。」

私はぶっきらぼうに本を渡す。

「サンキュー!」

山元はニッと笑ってそれを受け取る。

私はそのまま帰ろうとしたが、山元がそれを止めた。

「ちょ、ここで待ってて」

彼は教室の奥へと入っていった。

他の人に埋もれて山元が見えなくなる。

私は少し心細くなって廊下から教室を覗き込む。

山元はすぐに人混みから顔を出した。

私の元までくると手の中に何かを押しつけてきた。

「本のお礼。この間出かけたからそのお土産」

うれしそうに山元が言う。

私の手の中にはあの飴が入っていた。

「これ…もしかして抹茶?」

「そう」

にこにこと笑う山元の胸に飴を押しつけた。

「え、え?なに?」

「抹茶嫌い。」

「ただのお茶の飴だよ?」

彼は不思議そうに言った。

「緑茶は好きだけど抹茶は嫌いなの!」

「変わんないって、食べてみなよ」

彼はなかなか飴を受け取ってくれない。

そんなことをしているうちにチャイムがなった。

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