抹茶飴。
「ちょっと、これ早く取ってよ!」

私は体にのしかかる重い段ボールの山を彼、安原くんに押しつけようとした。

「ちょ、待てよっ。まだこれを上の段に乗せてないんだから」

私たちは今、バイト先の倉庫で在庫整理をしているところだ。

「マジで重いんだって!腕ちぎれるー」

「うっせーな!ちょい待てって!」

私が大声でぼやいていると、マネージャーの藤村さんが彼氏さんを連れて倉庫の近くを通りかかった。

「まーたイチャついてるのぉ?」

藤村さんは興味津々で私たちの元へ来た。

「イチャつくもなにも私たち付き合ってないんですけど…」

私は落ち着いた声で否定をする。

「安原くんだって私を女として見てないし」

実は内心焦る気持ちを隠すため、言い訳を淡々と口にしながら。

横目で彼を見ると私同様にありえないといった態度を取った。

ズキン。

心のどこかが痛む。

そーだよね。

安原くんにとって私はどうでもいい存在だもんね。

私は高一の時にバイトをはじめた頃から安原くんが好きだった。

それに気付いていたのか、藤村さんは私たちを一緒に行動させることが多かった。

それは嬉しいようで虚しくなる複雑な気持ちだった。

だって彼には好きな人がいたから…

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