【短】青に溶ける
青に溶ける


「お前の事をなんて呼ぶか教えてやろうか、」



 背中にフェンス。

 足元の数十メートル下には車の往来。

 そして、空。



 背中から聞こえる声はひどく機嫌が悪そうだ。



「馬鹿っつーんだ」



 舌打ちすら聞こえてきそうだ。



「………。」



 私は首だけ捻って彼を見た。



「死にたきゃさっさと落ちりゃいい。俺も忙しいんだ」
「…………。」



 彼は数日前から私に付き纏う、所謂死に神だった。

 否、自称カミサマ。

 誰しもが拝む神様がこんな人相の悪い奴だというなら、『お願い』が叶わないのも頷ける。



 カミサマいわく、



「勝手にイメージ作って勝手に拝んで勝手に安心して勝手に幻滅して、おめでたいもんだな人間は」

 だそうだ。


 確かにそうかもしれないな、と、不本意にも頷けてしまった。






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