【短】青に溶ける


「私、………、」



 ふと頭に過ぎった言葉は、あまりにも相応しくない。

 自分の今の行動にも、彼に対しても。



「死にたいんだろ」
「…………。」



 彼は本当に面倒くさそうだ。



「……死んだら、どうなるの?」
「んー」


 彼は宙を仰いだ。

 答える気が無いのかと思えば、意外にも彼の口が動いた。



「楽園だよ」



 大きな唇に弧を作る。



「………。」
「ククク。信じないんなら聞くんじゃねーよ」



 確かにそうだと思った。



「まぁ、楽園ってのは嘘じゃねぇ」
「アンタにとっては、でしょ?」
「………。」



 カミサマは私の言葉にふと、笑うのを止めて私をジッと見た。



「……何、」
「ひとつだけ教えてやる」
「………。」
「お前は死にたいんだろ?」
「………。」
「じゃあ、楽園だな」



 背中にフェンス。

 足元の数十メートル下には車の往来。

 そして、空。



「てめぇに嘘がねぇならな」









 膝は、もう随分前から震えていた。









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