星に願っても…。
「もしもし」
『あ、着いちゃいました?すみません。今すぐ行きます!』
「あ、ごめんね。よろしく。」
ケータイの向こうから聞こえた声は大野キラの声。
犯人の声。
そう自分に言い聞かせないと自分に負けてしまいそうでこわかった。
しばらくしてカフェで会う時よりもラフな格好をした大野キラが出てきた。
「ユウヤさん!」
「あ、ごめんね。わざわざこんな時間に」
「いえ、全然大丈夫です!あ、これ…。」
「ありがとう。助かった。」
「よかったです。」
「疑うわけじゃないんだけど…。これ、中は見てないよね?」
この中を見られていたらもう終わりだ…。なんてね。
でも、ほんとに見られたら困る。
「あ、大丈夫です!絶対見てません。ただ、最後のページだけ…。」
「そっか。ごめんね。ありがとう。ちょっと大事な書類とか入っててさ…。」
「いえいえ。」
「じゃぁ…。今日はこのへんで帰るね。いっつも話長くなっちゃうから。」
「あ、そうですね…。」
その笑顔は作り笑い?それとも本物の笑顔?
「またなんか忘れるかもしれないし、俺の番号さ…。登録しといてもらえたりする?」
そうすれば、あのカフェに行かなくても大野キラと連絡が取れる。
「はい!もちろんです!私のも登録お願いします!」
「うん。じゃぁ…ね。」
大野キラに背を向け車に乗り込む。
空には三日月が浮かんでいた。
ただそれだけのことなのに、涙が止まらなかった。
俺は変わる。
涙を流すのはこれで最後にしよう…。