コンプレックスな関係
帰りの電車の中、運良く座れた私は考えに没頭した。
貴弥に決別しようと、あの日、思っていたことを全て伝えた。
貴弥がそれをどう捉えたのか、それは判らないけど、あの僅かな時間が私にくれたものは大きい。
あの時、貴弥からの答えはなかった。
私にはそれが全て。
貴弥にとって、私は都合が良かっただけの存在だった。
私という存在感は、彼にとって最早意味を成さない。
それがはっきりしただけでも、私には大きな一歩だ。
新しい恋を始めるのに、なんの不都合もない。
新しい恋をしよう。
今度は、ちゃんと私を愛してくれる人を。
人は誰でも愛したいし、愛されたい生き物だと思う。
愛されたら、愛したい。
陽典くんは、そんな相手になってくれるだろうか?
酷く自分に都合のよい話だと思うけど、陽典君となら、愛し愛される、幸せな自分がいるような気がした。
最寄り駅を気にしながら、メールの返事を打った。