コンプレックスな関係
貴弥が選んだのは、文学部じゃなくて経済学部。
でも、外国語に興味があるならともかく、経済学部を学ぶならロシア語を取る必要はなくて、むしろフランス語やドイツ語、今なら中国語のほうが有利なはずなんだ。
「でも、そうね。確かに不思議ではあったわよ」
私がそう言うと、貴弥は溜息を吐いた。
「お前って、自分は自分、人は人、なんだよな…」
呆れたように言う貴弥に少しむっとする。
「それの何が悪いのよ?」
「普通女ってさ?彼氏に対してもっと色々要求するもんじゃねぇの?」
「要求って?」
「例えば選択科目は一緒が良いとか言うもんじゃねぇ?」
「アホらし。何の為に大学行ってんのよ。学ぶ為に、自分のやりたい道に進む為に高い学費払ってもらってんのよ?恋愛は別問題」
「……莉生って、男みたいな思考回路なんだな」
「ほっといて」
そんなこと自覚してる。
第一、束縛を嫌がったのは貴弥の方じゃないの。