コンプレックスな関係
「ちょっと、離して、よっ!」
両腕を目一杯突っ張って、兄貴の大きな身体を引っぺがす。
「莉生が冷たい…」
25歳の大の男が情けない声を出すなっ!
しょん、と肩を落とす兄貴を尻目に、私は急いで2階の自分の部屋に駆け込んだ。
なんで。
なんで。
なんで兄貴がいるのよーーーっ‼
誰か嘘だと言って。
落ち着け。
落ち着け、私!
きっと一時的に帰省しただけに決まってる。
うん。
今度は兄貴に邪魔されたくない。
思い出すのは中学時代の、幼くて淡い初恋とも呼べないような初恋。