コンプレックスな関係
第3話
5月最初の土曜日。
私は珍しく外で貴弥と待ち合わせていた。
待ち合わせの時間は11時。
現在、11時20分。
貴弥が遅刻なんて珍しい。
貴弥はシスコンで、実はどうしようもない女好きなんだけど
時間だけは正確。
何かあったのかな?
不安になってくる。
携帯を握りしめて、連絡しようかどうか迷う。
彼氏なんだから、そんなことで悩むなんておかしいのかもしれないけど
貴弥に重いって思われたらどうしよう…って考えてしまう。
はぁ……。
溜息を漏らして、携帯の液晶画面に表示した、貴弥の電話番号を眺める。
やっぱり、連絡しよう!
少しの逡巡の後、私は思い切って通話ボタンに親指を乗せた。
「何で難しい顔してんの?」
背後から伸びて来た腕が、私の首に巻き付いた。