コンプレックスな関係
第4話


美和ちゃんに会ってから数日。


貴弥の機嫌がすこぶる悪い。


「貴弥。いい加減にしてよ」


私に対する無言の敵意が見え見えすぎて。


彼氏にこんな視線を向けられる女なんて私くらいだろう。


「言いたいことあるなら言いなさいよ」


はぁ。


本当に面倒だ。


こんな視線の中じゃ、せっかくのランチが美味しくない。


って言っても、大学の学食だけどさ。


「美和が……」


貴弥がぼそりと話し出す。


「美和がお前の話ばっかりするんだよ。おまけに俺に絶対別れんなって言うし」


……ちょっと待て。


すっごく引っかかる言葉が今聞こえたような?


「貴弥、さ?私、と……別れたい、の?」


頭も胸もすぅっと冷えた。


「別れたいかも」


声が出なかった。


頭を鈍器で殴られるような…って言うけど、これがそうか…


「なんてな」


貴弥はラーメンを啜りながら、上目遣いでニヤリと笑った。


「今んトコ莉生と別れたいと思ったことはねぇよ。お前、他の女みたいに美和のこと優先しても怒らねぇし、なんだかんだお前にはなんでも話せるしな」


「あ…あぁ、そう…」


冗談にしても質が悪いわ。


心臓が止まるかと思った。


「俺の美和を奪った罰」


そう言って意地悪く笑う貴弥は、最高にかっこよかった。


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