コンプレックスな関係
「付き合ってないなら、いい。だけどな、こんな男の頼みなんか聞く必要はない。莉生の価値が下がるだけだ」
兄貴は私の腕を掴んで引き寄せる。
「二度と莉生に、俺の妹に近づくな。ひと言でも話してみろ。そのお綺麗な顔を変形させてやる」
あぅ……。
我が兄貴ながら、この凄味は本気で怖い。
「莉生もだ。こいつと二度と関わるな。関わったら部屋に閉じ込める」
……それはちょっと勘弁してください。
兄貴に腕を引かれながら、私は貴弥を振り返った。
貴弥に寄り添って心配する女の子。
「貴弥!」
私は貴弥を呼んだけど、貴弥はふいっと顔を背ける。
……あぁ。
もぅ、貴弥は私と関わらない。
終わりなんだ。
私が貴弥の隣に立つことはない。
きっとその隣には、すぐに新しい女の子が居るんだろう。
兄貴に連れられて帰る道すがら、そんなことを冷静に考えていて。
涙さえ、出なかった。
神様。
あなたはどうして、こんなにも意地悪なんですか。
好きな人の傍に居たいと。
傍にいられるなら、どんなことだって耐えられるのに。
それさえ許してもらえないんですか?