コンプレックスな関係
第7話
蝉の鳴き声が聞こえ始める頃。
前期試験が終わった。
あの日から、貴弥と関わることはなかった。
遥にも、電話で別れたことを伝えた。
『そっか…大変だったね。でも、私は良かったと思う。お兄さんの言うとおりだよ』
遥は心配して、その後も頻繁に連絡をくれて、時間のある時は一緒に居てくれた。
今日も、夕方から遥と約束していた。
昨夜電話で話した時。
遥から何か企んでいる気配を感じたけど、私は気付かなかったことにした。
何も考えたくないし、感じたくない。
無意識に貴弥を探す自分が居る。
こうなって、初めて気付いたことがあった。
同じキャンパスでも学部が違えば、どちらかが会おうとしない限り、会わないんだ。
少なくとも、私と貴弥は一日に一回は顔を合わせていた。
それはつまり。
互いに会おうという意識があったからだ。
それに気付いてから、思い出すのは楽しかった想い出ばかり。
想い出は美化されるのだということを、私は今、身を以て知る。
貴弥はどうしてるのかな。
もう、新しい彼女……いるよね。
なんか、私だけ置いてけぼりだ。