コンプレックスな関係
「とりあえず、座ろうか?」
陽典君の言葉で我に返る。
「そーね……」
なんか、どっと疲れた。
「この前はごめん。驚いたよね」
この前……合コンの時のことかな。
「いきなり、ずっと好きだったとか言われても困るよな」
……忘れてた。
あの後、兄貴と貴弥の件で頭の中がいっぱいだったもんなー……。
「もういいよ。気にしてないし」
陽典君、ごめん。
「えー?少しは気にして欲しいんだけど」
「忙しくて、それどころじゃなかったのよ」
冷たい言い方だけど、事実だから。
「まあ、とりあえずは友達の縁、復活しない?」
「友達の縁?」
「そっ。俺は別に篠井のこと困らせたいわけじゃない。けど、このまま篠井と連絡取れなくなるのも淋しいし」
「だから、友達?」
「うん。そのほうが気楽だろ?」
「まぁ、そういうことなら……」
それくらいなら大丈夫かな。
とてもじゃないけど、今は新しい恋なんてする気分じゃない。
「じゃ、連絡先交換しよ」
「あ、うん」
中学の時に返ったみたいだった。
それから中学時代の思い出話や、当時の同級生の消息だとか。
互いの気持ちには触れないように、当たり障りのない会話で盛り上がった。