コンプレックスな関係
第9話
夏休みも半ば。
私は大学に程近いカフェで待ち合わせていた。
「篠井!待たせてごめん」
現れたのは、陽典君。
すかさず店員さんがおしぼりとお水をもって来る。
「篠井は何飲んでるの?」
「ん?これはカフェ・コン・パンナ」
「カフェコン…?」
「要はウィンナコーヒーだよ」
「じゃ、俺もそれにしよ」
陽典君は、店員さんに注文をして、ようやく座る。
「呼び出してごめん」
「いいけど、どうしたの?」
連絡先を交換したものの、陽典君と連絡することはあまりなかった。
「んー。せっかく夏休みだし、篠井と遊びたいなぁーって」
にこにこと笑う陽典君。
その笑顔は屈託がなくて、中学時代の彼の笑顔と同じ。
あの頃より、すこし大人になった私達だけど、本質はあまり変わらないのかもしれない。
「篠井さ、彼氏と別れたんだよね?」