コンプレックスな関係
そのときの私。
「ここは砂肝の素揚げが絶品なのよ」
「それ焼き鳥じゃねぇじゃん!」
私のお気に入りの焼き鳥屋さんで、陽典君と打ち合わせもそこそこに、呑んで騒いでいた。
男の子と2人で食事という状況も、陽典君の気遣いなのか、緊張することもなく。
私はかなり元気に楽しく、焼き鳥屋を満喫していた。
「あれ?篠井、電話…」
テーブルに置いていた携帯の振動に、先に陽典君が気付いた。
「誰だー?」
携帯を手にすれば。
『結城 美和』
……そう言えば、何か話したいことがある的な連絡もらっていたっけ。
「ちょっとごめん」
一言断って、携帯を手にして、人声の少ない場所…つまりトイレへと向かう。
「はい、篠井です」
出来るだけ冷静にしなきゃと思って出たものの。
電話の向こうはそうじゃないらしかった。
『美和ですっ!莉生さん!助けて下さい‼』
半分、涙声の美和ちゃん。
「どうしたの?とりあえず落ち着いて、何があったのか教えて?」
『お兄ちゃんがっ‼とにかくすぐ来てもらえませんか⁉』
美和ちゃんは一方的に場所を告げて、電話を切ってしまった。