コンプレックスな関係
「ありがと!」
精一杯の感謝の気持ちと、少しだけの申し訳なさを込めて、私は笑顔で頭を下げた。
お店を出ると、私は美和ちゃんから伝えられた店子へ走った。
走りながら、自分で自分が情けなくなる。
私を好きだと言って、優しくしてくれる男を放り出して、私のことなんて好きでもなんでもない男の処に走っているなんて。
もう終わった関係なのに。
諦めて、忘れるのが一番良い筈なのに。
だけど私は走ってる。
これを妄執と言わずして、何と言うのだろう。
行ったところで、私に出来ることなんてないと、理性が叫んでいた。
なのに、私の足は止まることはなく。
15分。
流石に15分全力疾走が出来る程の体力はなかったけど、それでも出来る限り急いで来た、その店。
入り口には、パトカーが1台。
私は頭から血の気が引いたのを感じた。