コンプレックスな関係

「お兄ちゃん?」

ふと、美和が俺を覗き込んでいた。


「あ…あぁ。どうした?」
「もー!お腹空いたし、夜ご飯食べて帰ろ?って言ったの」


美和がぷぅと頬を膨らます。


そんな幼い仕草も愛おしい。

「はいはい。何か食べたい物あるか?」


頭ひとつ半低いところにある美和を見下ろせば、美和は1番俺が好きな笑顔を向けてくる。


「食べたい物かぁ……そうだ!あのお店行きたい!前に連れてってくれたでしょ?先輩のお店」


それは食べたい物じゃないだろ。


そうは思うものの、美和の笑顔が見れるなら構わない。


「おー。わかった」


中学時代の2年上の波川という先輩が、何年か前にBARを始めていた。


俺もお世話になった先輩で、ちょいちょい顏を出す。


BARとはいえ、一応食事も出来る。


「波川さんのパスタって、何を食べても美味しいよね」


上機嫌な美和。


正直、波川先輩は俺の思考回路を熟知しているので、そういう意味では苦手だ。


でも、美和が行きたなら俺に拒否する理由はない。






< 83 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop