コンプレックスな関係
「お兄ちゃん?」
ふと、美和が俺を覗き込んでいた。
「あ…あぁ。どうした?」
「もー!お腹空いたし、夜ご飯食べて帰ろ?って言ったの」
美和がぷぅと頬を膨らます。
そんな幼い仕草も愛おしい。
「はいはい。何か食べたい物あるか?」
頭ひとつ半低いところにある美和を見下ろせば、美和は1番俺が好きな笑顔を向けてくる。
「食べたい物かぁ……そうだ!あのお店行きたい!前に連れてってくれたでしょ?先輩のお店」
それは食べたい物じゃないだろ。
そうは思うものの、美和の笑顔が見れるなら構わない。
「おー。わかった」
中学時代の2年上の波川という先輩が、何年か前にBARを始めていた。
俺もお世話になった先輩で、ちょいちょい顏を出す。
BARとはいえ、一応食事も出来る。
「波川さんのパスタって、何を食べても美味しいよね」
上機嫌な美和。
正直、波川先輩は俺の思考回路を熟知しているので、そういう意味では苦手だ。
でも、美和が行きたなら俺に拒否する理由はない。