コンプレックスな関係
美和と連れ立って先輩の店に向かう途中だった。
「あ……」
美和が突然立ち止まる。
「どーした?」
美和を見ると、その視線はある一点に固定されている。
その視線を追って目を上げると、カフェから出て来る莉生がいた。
莉生が大好きな美和の目が輝く。
……なんか、すっげぇ腹が立つんですが。
むっとして、美和の腕を掴めば、美和はきょとん、と首を傾げて俺を見上げてくる。
あぁ…。
そんな上目遣いはやめてくれ。
俺はきっとどんなお願いでも聞いてしまうだろう。
けれど、美和の表情が突然曇る。
「美和?」
軽く、掴んだ腕を揺すれば、美和の表情が更に悲し気に歪んだ。
「莉生さんの、彼氏さん、なのかな…」
ぼそりと、そんなコトを呟いた。
あの莉生に彼氏?
そりゃどんなもの好きだ?
そう思って美和の目線をもう一度追うと、カフェの前には莉生。
さっきと違うのは、その横に背の高い男がいること。
莉生な何やらぺこりと頭を下げていたが、相手の男はにこやかに、楽し気だった。
そして、男が莉生の手を取って、2人は人混みに消えた。