コンプレックスな関係
「そーだよね…莉生さんならすぐに新しい彼氏出来るよね…」
妙に落ち込んだ美和。
だけど俺自身、他の男と手を繋ぐ莉生を見て、酷く動揺したのは事実。
悲しいとか、辛いとか。
そんなことじゃなくて。
なんだか酷くむかついた。
なんだか照れたように笑う莉生。
あんな表情を、俺は一度だって見たことがない。
そもそも莉生に、照れるというスキルがあったことに驚いた。
あの男は、莉生からそういう表情を引き出した。
……なんだ?
それがどうしたっていうんだ?
結局、莉生だって俺が好きだったわけじゃない、ってことなんだろ?
俺が他の女と遊んでも黙認してたわけだし?
そう思ったのに、酷く苛ついた。
「お兄ちゃん?」
くいくい、と美和が俺のシャツの袖を引っ張った。
「ん?」
「いいの?莉生さんが他の人と付き合っても、お兄ちゃんは後悔しないの?」
どこか哀しそうな美和。
「何言ってんだよ。莉生とはもう別れたんだぞ?」
「でも……」
「あー。もうこの話は終わりだ。さっさと行くぞ?」
俺は、俺にしては珍しく美和の言葉を遮って、その腕を引っ張ってその場を離れた。