コンプレックスな関係

「ありがとう。美和ちゃんにそう言って貰えると嬉しい」


美和ちゃんの肩を叩くと、美和ちゃんがようやく顔を上げてくれた。


「今日一緒に居たのは中学の同級生。ーー付き合って欲しいって言われてる」


美和ちゃんに話しても仕方のないことかもしれない。


でも、彼女なら。


美和ちゃんに話したら、整理が付くんじゃないかって。


「貴弥にはね、私から告白したの。貴弥の女癖の悪さも承知してた」
「莉生さん?」
「うん。ちょっと聞いて?」


怪訝な顔の美和ちゃんに笑い掛けると、彼女は黙って頷き返してくれた。


「付き合って貰えることになって、それだけで良かった。だけど、覚悟しててもやっぱり浮気に気付く度に心は凍っていってね。見ざる言わざる聞かざるを通してたんだけど」


そう。それが良くなかったんだ。


ズルズルと続けてしまった、形だけの関係。


「別れた直接の原因は私の兄だけど、でもそれがなくてもきっと終わってた。だってこんな形だけの関係、いつまでも続けてたら、私も貴弥もきっとなにも変わらない」


きっと潮時だったんだ。




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