オートフォーカス
第1章 冬の港町

1.…マジだよ

「はあっ…。」

意識して大きく吐いた息は白い不安定な形をしながら瞬く間に空へ消えていった。

今日も寒い。

12月なんだから当たり前かと自分に突っ込みをいれて吐き捨てる様に篤希は笑った。

また出た白い息から暖をもらうように両手を擦りあわせる。

「…さっきより寒いな。」

空を見上げれば澄んだ空気のおかげで星空が薄く見えた。

駅から歩いてきた時より明らかに体感温度が低い気がする。

マフラーだって手袋だってしているのに、まるで意味がないように感じる位だ。

そんなことを考えていると追い討ちをかけるように冷たい風が吹き抜けた。

「海風…。」

ふてくされたように呟くが風に文句を言っても仕方ないと途中で口を紡いだ。

仕方ない、ここは海の近くなんだから街中より寒さは倍増しているのだろう。

日も暮れている今なら尚更だ。

寒さを感じさせる要因がロイヤルストレートフラッシュのように並んでいる。

勝ち目なんてない。



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