オートフォーカス
我に返ると、相変わらず幸せそうなカップルが多いこの場所に少し居心地の悪さを感じてしまう。

数時間後の自分は彼らのようになれるのだろうか。

それとも。

そんなことを考えても仕方ないかと苦笑いをする。

「じゃあ、そろそろ行ってくる。」

「おう、頑張れよ。」

軽くお礼を伝えると、篤希は通話を切って立ち上がった。

光溢れる場所を見据えて手元のカメラに力を込める。

気合い入れるためか緊張を解くためか、小さく息を吐いてカメラを構えた。

心を落ち着かせる為にはこれが一番だ。

これから向かう人物に思いを馳せてファインダーを覗く。


さあ、決着をつけよう。


夜空に輝く月をおさめてシャッターをきった。


――カシャッ



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