オートフォーカス
やっぱり話に乗ってくれた篤希に加奈はさらに嬉しくなったようだ。

それは篤希も同じだったようで表情も似ている。

「私、この授業好きなんだ。全部うのみにするのもあれだけど、絶対役に立つと思う。」

将来に向けての準備をしているような加奈の言葉に篤希の心臓が跳ねた。

加奈の目は輝いている。

ちゃんと目標を持って物事に取り組んでいる人の目だった。

それは篤希には少し眩しすぎる輝きだということを加奈は知らない。

この話には乗れなくて思わず逸らすように篤希は話題を変えた。

「知ってる?意外と講義かぶってるの。」

「あら、そうなの?」

何の違和感もなく返してくれたことに篤希は心の中で安心した。

「君はいつも真剣に授業を受けてた。たまに欠伸してたけど。」

「あはは!見られてたか。でもこの大学の講義って結構面白いのが多いと思わない?受けないと勿体ない気がしちゃうのよね。」

そんな他愛のない話を続けて目的地の教室に辿り着く。

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