オートフォーカス
その仕草に可愛さを感じて表情が緩んでしまう。

「ううん。いま来たところだから。」

ベタな会話だと分かっていても事実なのだからこれ以外に言い様がなかった。

いつもスカート姿の絢子は今日もそれは変わらない、しかしほんの少しいつもよりおめかししているのではないかと感じてしまうのは気持ちが高ぶっているからだろうか。

決して走りやすくないパンプスで駆けてきてくれた、それだけで篤希は嬉しくなっていたのだ。

自分の為に、そんな優越感が篤希の笑顔を明るくさせる。

篤希のにこやかな笑顔を見て絢子もホッとしたように笑った。

「やっぱり賑やかだね。」

ガヤガヤと騒がしい周りを見ながら絢子が呟く。

「駅前はさすがにね。じゃ、行こうか。」

しかし大学が春休みに入ったせいか、駅前だけでなく街中が平日にもかかわらず賑やかだった。

明らかに同年代の人が多い。

2人は他愛もない話をしながら目的地である家電量販店に入っていった。

そして外とはまた違った賑わいの中、目当てのパソコンコーナーで立ち止まり物色を始める。

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