オートフォーカス
「前も、そう言ってくれたよね。」

篤希は視線を向けた。

「食堂で皆といたときに仁美に言ってくれた。」

「え？」

何のことだか思い出せない篤希は表情で問いかけた。

「さっき私に言ってくれた言葉。つい言い過ぎちゃった仁美を雅之くんが怒った時、皆の前で自分を悪いと認められる仁美は凄いと思うって。」

「あ…。」

その出来事を思い出した篤希は小さく口を開けた。

篤希が思い出したことが分かると絢子は微笑み、手元のカップを見つめる。

「仁美…前々から誰に対しても余計なことを言っちゃうって気にしてたの。よくそれで揉めたり喧嘩したり…あのとおり美人だから周りからの風当たりも厳しくて。なかなか友達が出来ないって悩んでた。」

絢子の言葉に誘われて篤希の脳裏にも普段の仁美の姿が浮かんだ。

明るくてサバサバした性格の仁美、見た目も良くて傍目には男女問わず愛され常に周りには人がいるような印象があった。

しかし彼女はいつも絢子といる、絢子と篤希のグループにいる。

顔は広いし携帯が鳴らない日はないのではないかと思わせるくらいだ、しかし他の誰かと一緒にいることは思い返すとそんなに無かったのではないか。

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