オートフォーカス
雅之なら言いそうだとすぐに想像できたのだろう。

まさしくその通り、彼なら言いそうな言葉を間髪入れずに発してくれたのだ。

その場にいた時は裕二の怒りと雅之の呆れと篤希の笑いで賑やかになった。

「地元の友達とは違って、環境の違う者同士が集まる大学だと腹を割って話せる友達ってのはなかなか出来にくいと思うんだ。でもこの2人とならって思えた。」

「…私も。」

絢子の中にも思い浮かぶ人物はいる。

それが伝わり篤希は嬉しくなって微笑んだ。

できれば彼女の中に浮かぶ人物になっていたい。

「いい仲間に会えて僕らは幸運なんだと思うよ。」

宙に描いた人物を思い篤希は言葉通り幸せな気分に包まれた。

「それは私も入れてくれてるの?」

眩しそうに言葉を紡ぐ篤希に絢子が尋ねる。

「勿論。」

「そっか。ありがとう。…私も篤希くんがそうだと思っていいのかな?」

上目遣いで探る姿は反則に近い。

篤希は瞬間的に高まった鼓動を隠しながら頷いて答えた。

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