オートフォーカス
今日、もしこの状況を加奈と体験するとしたら彼女はどんな服装で来るのだろう。

そんな有り得ない妄想をしていた時、聞きなれた声が聞こえた気がして篤希は足を止めた。

「ありがとうございました。」

国際的に人気のあるキャラクターの展示イベントをやっているようだ、視野を広げた時に見えた景色でそう理解する。

そしてそこに見慣れた姿を見つけた。

いつの間にか流れるように入っていた百貨店の催事会場、その一角で加奈が接客をしていたのだ。

グッズ売り場はそれなりの賑わいを見せている。

百貨店の制服を着た、普段見ない加奈の姿に大人っぽさを感じて篤希は思わず見とれてしまった。

あんな口角を上げるだけの大人っぽい微笑みを見せるような人物だっただろうか。

「あの子、同じ大学の子だよね。いくつか一緒の講義があるから知ってる。」

「…あ、そうなんだ。」

横にいた絢子の言葉にうまく反応できず、興味なさそうなフリしか出来なかった。

それは篤希の中で違和感として残るが、絢子も同じ気持ちだったらしい。

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