オートフォーカス

3.最高かも

あの時、学祭で加奈に出会わなかったらきっとこんな風には思わなかっただろう。

街角のカメラ屋のウィンドウに飾られたカメラの前で立ち止まった時そう思った。

今までの篤希なら、そこにカメラがある、それ以上の感情は無かった筈だ。

でも篤希は心を動かされてしまった。

このカメラでもっといろんな物を撮ってみたい。これが欲しい、そう気持ちが動いたのだ。

何気なくしていたバイトも、何となく貯まっていくお金も意味を持つとまた違う輝きを放つ。

冬のアルバイト合宿の金額は結構なものだったし、その間に休んでいた代償で組まれたハードなシフトのおかげで貯金額は一気に増えた。

合わせて派遣バイトにも手を出したから休みがない分収入が潤っていく。

バイト代がたまって貯金にも余裕が出来た頃、篤希は念願の一眼レフを購入したのだ。

あのカメラ屋のウィンドウに飾ってあったカメラではないけれど、自分なりに調べて使いやすそうなものを買った。

借り物ではない、自分だけのカメラ。

そう思うと達成感とともに愛情みたいなものが生まれて部屋に置いてあるだけでも嬉しかった。

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