オートフォーカス
カメラを買ったからと言ってすぐにキツキツのスケジュールがなくなる訳ではない。

ようやく落ち着いて休みが取れたころに景色を撮ろうと、篤希は逸る気持ちを抑えながら原付を走らせて郊外へ出た。

武道館や野球場、体育館に美術館まである総合運動公園に着き、まずは少し歩いてみる。

平日だからか小さな子供を連れたお母さんたちの姿が何組か見られた。

ここは子供たちが遊べる遊具や芝生、それに噴水も遊歩道もあってのんびり過ごせるようになっているらしい。

よちよちと歩く子供の後ろを幸せそうについていく様子は穏やかの時間を感じさせてくれる。

今の自分にはあまり触れ合う機会のない空間だと篤希は新鮮な気分になった。

犬の散歩をする人もいる、仕事の合間に休んでいる人もいる、それぞれがこの自然に囲まれた空間で思い思いに安らぎを感じていた。

少しずつこの場の空気に慣れてきた篤希はようやくカメラを取り出して思うままにシャッターをきり始める。

一番最初に撮ったのは空。

まるで初めての撮影日の天気を覚えておくように真っ青な空と白い雲を陽光が当たる木々とともにカメラに収めた。

それを機に次々と自然に向けてシャッターをきり、その度に篤希の心は満たされていく。

< 119 / 244 >

この作品をシェア

pagetop