オートフォーカス
歩いては撮る、それを繰り返しながら篤希は公園の奥へと向かっていく中で、趣のある建物が入って思わず指を止めた。

顔をあげてその姿を肉眼で確認する。

それはどうやら郷土の歴史展示館のようだった。

「すごく鮮やかに建物を撮るんだね。」

加奈に言われたことを思い出してさっきまで構えていたものと少し枠をずらしてピントを合わせる。

今までしなかった、建物をメインにした絵を撮ろう。

そう思いついた瞬間にもうシャッターは切られていた。

カシャッという音が心に響く、今日一番の達成感に思わず篤希は微笑んでいた。

「…最高かも。」

何も飾らず口から出た言葉でさらに気持ちが高ぶる。

加奈に見せたい。

その気持ちが篤希に芽生え、そのあとも写真を撮り続けた。


< 120 / 244 >

この作品をシェア

pagetop