オートフォーカス
見事な景色に携帯のカメラをかざす生徒が何人もいた。

なんとも微笑ましい光景に篤希の気持ちも和む。

「今日はいい天気だね。」

「そうだな。」

篤希が呟いたように空は晴れていて、たまに吹く風が少し肌寒く感じるものの過ごしやすい陽気だった。

こんな日は気分も晴れやかになるのに。

裕二も外に出たことで少しは気持ちが変わっているといいのだけれど、そう篤希が考えていると雅之が声を出した。

「じゃ、俺もう帰るわ。」

「え?あとの講義は?」

この後も雅之は篤希と同じ講義を受講している、比較的まじめな雅之はあまり講義を休むようなことはしない。

それは意外な事実だと去年は仁美と裕二に散々からかわれていたのだ。

真っ先に休みそうなやつだと言われ、侮辱行為だと雅之は2人に3日間学食を奢らせてもいた。

「自主休講。高校ん時の奴らと花見すんの。」

「あ、そっか。雅之は地元だったね。」

「そ。」

朝から少し楽しそうな雰囲気を持っていたのはそのせいだったのかと篤希は納得した。

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