オートフォーカス
「これ隣の市にある図書館らしいの。」

加奈が指したその建物は近代的なような懐かしいような、おもしろい雰囲気を持った建造物だった。

写真の下の説明を読まない限り、とても図書館には見えない。

「これが?」

篤希は疑うような気持ちで顔を近づけてその建物を見つめた。

子供のような篤希の様子に加奈は笑う。

「おもしろいでしょ?近いうちに行くつもりなんだけど、良かったら一緒に行く?」

「本当?」

「空いてる日はある?」

加奈は手帳を取り出して今月のカレンダーを見せた。

色々とカラフルに書かれた予定は彼女の多忙さを物語っている。

しかしよく見ると学校の講義の内容も少し書かれてあった。

実習の持ち物を忘れないようにするためのメモのようだ。

「この辺、休講になるやつあったな。」

「もしかしてマーケティング?」

「そう。」

「なんだ!一緒だったんだ。」

加奈の言葉に篤希は目を大きくした。

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