オートフォーカス
建物を撮るフリをして加奈の写真を撮ってしまった。

いや、フリじゃない。

何も思わず加奈を撮ったのだ。

思いがけない自分の行動に篤希は戸惑う。

無意識、それはまるでオートフォーカスのようにいつの間にか加奈にピントが合わされていた。

でもオートなんかじゃない。

さっき撮ったばかりの画像を見つめて篤希は思った。

自分でピントを合わせ、間違いなく加奈を撮っている。

自由に歩き回る加奈を見て、篤希は改めて加奈を被写体にシャッターをきった。

自分にも分からない、今までとは違った感情に少しの戸惑いと、少しの幸福を感じながら。

でもそれはまだ、意識的に見て見ぬふりをしているのだと自分でも分かっていた。

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