オートフォーカス
「おっ?頼もしいね~カッコよく撮ってくれよな?」

「努力はするよ。」

裕二が差し出した拳に篤希も自分の拳を合わせる。

カメラの話で盛り上がる裕二と篤希の傍で絢子が複雑な心境だったことを2人は知る由もない。

そうした会話の数日後には学祭が開かれた。

天気に恵まれ見事な秋晴れだ。

去年よりも左腕に付けられた記録係の腕章が軽く感じる。

自分にあてられた担当を確認しながら篤希はとりあえず構内をぐるりと歩き回っていた。

カメラは2台、貸し出された備品と自分のカメラだ。

荷物になって重たいけどどうしても自分のカメラでもこの景色を収めておきたかった。

風が少し肌寒くなったこの時期に祭りの熱気は負けてはいない。

篤希がカメラを構え何枚か周りの様子を撮影していると背後から声がかかった。

「おい、篤希!」

声で誰が呼んだのかすぐに分かる、篤希はカメラを下して声のした方を振り向いた。

そこには見たことのない人物を連れた雅之が手を挙げている。

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