オートフォーカス
雅之に手を振り、それに続く隼人と操にも同様に手を振って送り出した。

軽く会釈する2人の姿もまた見ているだけで心地よくなる。

篤希はもう一度カメラを構え、自然体の2人を何枚か収めた。

記録係の仕事は現場にいる以上いつでも発生する。

腕章を見た瞬間に呼び寄せ写真を撮るようにねだる人も少なくはないのだ。

撮って、逃げて、また捕まって撮って、本来の仕事とサービスを交えながら篤希はやっとサークルのテントに辿り着いた。

「篤希!お疲れ~!」

篤希の姿を見付けた仁美が一番最初に大きく手を振って迎え入れてくれる。

確か去年もこうやって出迎えてくれたのは仁美だったと篤希は懐かしくて笑った。

今年もこのテントを基盤に学祭を楽しむと言っていた仁美と絢子と裕二は当番でもないのに手伝っていたのだ。

「来た来た!何か食ってくか?」

手招く裕二に寄っていくと沢山のお菓子が入った袋と今年の売り物タマゴ煎餅を出してきた。

絢子も気を遣ってお茶のペットボトルを横から差し出す。

「ありがとう、これ貰おうかな。」

遠慮なく篤希はタマゴ煎餅を手に取った。

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