オートフォーカス
「持ってみる?」

用意してもらったおしぼりで手を拭きながら絢子に尋ねてみた。

勢いよく顔をあげた彼女の目はキラキラと輝いている、どうやら興味があるようだ。

「いいの?」

「勿論。どうぞ。」

篤希は肩から下ろす動きに見惚れている絢子の前にカメラを差し出した。

「ありがとう。」

「こう持って…そう。」

持ち方もよく分からない絢子に使い方を教える篤希、絢子は真剣に篤希の言葉に耳を傾けて壊さないように慎重に扱う。

その瞬間、勢いのある音が鳴った。

「わっ!シャッター押しちゃった!」

「気にしないで。」

申し訳なさそうに見つめる絢子に篤希は微笑んだ。

そしてもう一度、今度は自分の思った瞬間に押すように促してみる。

絢子は震える指に力を入れて再びシャッターをきった。

「凄い!音が全然違うんだね。」

「それがいいんだ。」

「分かる、なんかいいね。」

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